モラハラ義母・意地悪な議姉・頼りない夫。
孤独で切ない結婚生活…て、なんてもんじゃない。
あらすじ
晴子は嫁いだ家で姑にイジめられ、産んだばかりの長女を本人不在の親族会議で奪われてしまう…。支配的な姑、意地悪な義姉、頼りない夫。
孤独で切ない結婚生活は、徐々に晴子の心を蝕んでゆき…。
続きは感想 ネタバレ注意
“愚図な女ばかりじゃないぜ”とか、“さよならみどりちゃん”、“天井の下”などなど。痛々しくもどこか毒々しい…そんな女たちのどこにでもある、なにげない日常を切り取った様な作品が多く、どーしよーもないダメな男たちにハマる女の弱さ、人生そんなもんだよ、そーゆー男ってそんなもんだよって言われてる様な…でも、そんな男を切り捨てたり踏み越えていく強さ…。そんな女性の“凛とした内面のかっこよさ(たとえ強がりだとしても)”が表現された作風に深ーーくハマり読みあさってました。傷つけられたり傷つけたり、それでいて淡々とした登場人物達が大好きだった。(かと思いきや、超純情の夢の温度とか描かれた日にはーもうーそりゃーたまんない笑。)
私は、南Q太が描く女性がタバコを吸うシーンが特に好きで。と、ぶっさいくな人やばーちゃん笑。
今回の『グッドナイト』はそんな“女性の強さ”が削ぎ取られた様な…全てを諦めたような中年女の主人公・晴子。(表紙、びびりました。正直こわかった。)
晴子もかつてはそんな美しさ、強さをきっと持ち合わせていた人のはず…。フィーヤンでこのグッドナイトを読んだ時、最初のこのページに晴子の今までの人生が全て映っている様な気がした。
嫁いだ先の姑は本当に人間のクズって位最悪な姑で、結婚前、父親がいない晴子に『うちの和雄はどんな方でも嫁にもらえるのに』とか、朝方、夫婦の寝室に入り『ゆうべはちょっとうるさかったねぇ』とか。ありえない。それからも、もうこれでもかって位、罵られ虐められまくる。
そして晴子にとって一番の仕打ちは…
『この子は和雄の姉の久子にやる』
『晴子 頼む』
産んだばかりの娘を義姉に渡さなければいけなくなる…。優しいけれど頼りにならない夫。
夫は実家を出る事を晴子に提案したが、逆に『まほ(娘)に会えなくなってしまう』と晴子は姑との地獄の様な同居生活を続ける。そして数年後、晴子は長男を産むが、この長男・かずきが皮肉にも姑とそっくりで…。一方、義姉の娘になった“まほ”はよく義姉と共に実家に来ていた。
『まほ ここにいたの おばあちゃん探してたよ いこ』
晴子を召使いの様に扱う義姉を“母”としてとても慕い、見た目は晴子に似てとてもかわいいが、いとこのかずきを裏でいじめたり性悪な義姉の一面も見える。それでも晴子はまほがかわいくて仕方ない。
とても切ないのが、晴子の苛立ちをぶつけられた息子・かずきが…
『おばあちゃんににてるからおかあさんはぼくがきらいなの』
そして、ついに姑と性悪義姉にブチ切れた晴子が『出て行け』と言われ一人飛び出すが、かずきの鳴き声を聞いて戻り、抱きしめ連れ去るこのシーン。
胸がイタイ。本当に切ない。そのまま家を出たけれど、義父の介護の為に再び実家に戻った晴子。
また、あの地獄の様な日々が戻ってくる…。
『何しに帰って来た この疫病神!!』
あ、遅ればせながらこれが姑です。←見りゃーわかる。
姑に怒鳴られたり悪態をつかれたり、安定剤を飲みつづけ、どんどん蝕まれていく晴子の心…それを現す描写がこれ。
それでも、深い闇や孤独感を何も感じないかの様に、全てを諦めた様に、今では逆にボケた姑に毎日文句を言いながら暮らし続ける…。夫は外に女がいる様で“出張中”。この漫画の冒頭シーンで浮気相手から『別れてくれ』と電話があるがうすら笑みを浮かべ、何もなかった様に再び昼寝をする晴子。
そして子供たちも真実を知り…。
『全然似てないよね あたしらさ』
『今日自分の戸籍謄本とってきた 親のところ…和希のおじさんとおばさんの名前だったよ あたし養子だって』
和希は少し前から知っていて、知らないフリをすると言ったまほに対し、『心の中で思ってるだけはいい?』…と。
1巻はここで終わりなんですが…ここまでの仕打ちをされ、それでも結婚生活を続ける理由はやはり“愛する娘”の近くにいる事、なんだろうか…。もう一人の息子にはうまく愛情表現できてないのが可哀想すぎる…。晴子の生活はこのまま変わる事はないのか?
私は南Q太の淡々とした、時に暴力的で破壊的なモノローグ(登場人物の考え)が大好きなのだが、この漫画では一切のモノローグがない。だからこそ、どんな話に進んでいくのか検討すらつかない。何も変わらずに終わるのかもしれない。だからこそ…うーーー!気になる…!!
読めば読む程、重め…ですが、おすすめしないワケない。読んで下さい。
《引用元 作品DATA》
出版社:祥伝社
著者:南Q太
掲載誌:FEELYONG