11じゅういち(バーズコミックススピカコレクション)

これは私のトラウマじゃない。
人間の「痛さ」を愛してやまない天才・いがわうみこの真骨頂!!

 

【あらすじ】
ある人は彼に焦がれ、ある人は彼の境遇を想って泣いていた。語り口や記憶、時間の流れや経験によって異なる「彼」の姿。新鋭・いがわうみこが、笑いと涙で贈る、ある男の物語――

 

続きは感想 ネタバレ注意

 

あーやばいやばいやばい…ワタシの脳内・漫画ヲタクさんが叫んでる…こう叫んでる…。

これは(私の中で)今年一番の作品になるかもしれないっ!!!!

は?まだ3月始まったばっかですけど?ええ。分かっとります。承知しとります。それでもなんだか揺るぎない自信が今、あります。
最初は人の「イタイ」所を揚げ足取るかの様なギャグよりの漫画だと思ってたんです。目次の段階で面白いに違いないって思ってニヤニヤしたし。2話めの脳内プルプル女子めっちゃツボだったし。

 

 

 

『忠範おじさんの隣に住んでる老夫婦の義理の娘さんの従兄弟の同僚の妹さんの友人のご夫婦の会社が倒産して旦那さんが奥さんとお子さんと一緒に心中したの……?』
『ええ…忠範おじさんの隣に住んでる老夫婦の義理の娘さんの従兄弟の同僚の妹さんの友人のご夫婦の会社が倒産して旦那さんが奥さんとお子さんと一緒に……』
くらっ

『なんてこと……っ』
『なんてこと……っ』
『母さん朝メシは?』
『ありゃあダメだ朝マックにでも行ってくるか』

 

 

 

 

で、めっちゃ笑いながら読んでたんです。でも…でも途中からえ?あれ?ってなって…ひとつひとつの話や登場人物がつながり始めて…違う『痛さ』がテーマだって気付いたんです。

この漫画は、読まないと分からないんです、ネタバレなんかでネタバレできるようなモンじゃないしほんとはネタバレ見ずに読んでもらいたいんです。←じゃぁ書くな。でも書きたい!!書かせて下さい!!

あらすじの通り、話は一人の須田春義(すだはるよし)という男(表紙の彼です)を取り巻く11人の女達の主観によってそれぞれ話が進む。この須田春義は、父親の再婚により継母と義理の妹と暮らし始め、その継母に虐待をうけ続ける。そしてその関係で悩んだ父親に自殺されてしまう孤独な男。継母からの虐待はその後も彼のトラウマとなり続ける。

そんな義春を取り巻く11人の女達が…脳内お花畑女子高生・近くで見ていた女・半分だけ家族の子・アラサー女教師・アンニュイフリーター女・隣に住む女2号・救世主おばはん・いたぶるの大好き女・ナチュラルボーンバカ女。『???』しか出てこないw

まずは『近くで見ていた女』。春義の父が生前時、春義がすんでいた団地に同じくいたミキ(と、姉)。ミキは春義の虐待に気づく。春義もミキにだけ自分の心境を話せる、そんな存在。

 

 

春義のお父さんは優しいけど気弱で
結局どっちも選べずに春義を不幸にするバカ
なんで選べないの

 

 

このミキの性格がめっちゃ好きです。サバサバしてて、派手で、心がとても優しい子。春義の父親の死をきっかけに会ってなかったが、大人になって春義に再会する。隣で見ていたわけだけど、春義と同じようにミキの心にもあの時の事がしこりの様に根強く残ってた。終盤では春義と過去について話し今春義はどう思っているのかを聞き、ミキは…

 

 

 

『……わたしは わたしの中では春義が幸せになる過程をこの目で見てちゃんと終わるんだと思う。』

 

 

 

 

そして春義に欠かせない存在、それが『救世主おばはん』。春義の父親の妹、つまり叔母にあたり一人になった春義の身元引受人。
春義にわざといじわるを言い家事をさせるが、実は“役割を与えて窮屈じゃないここにいていい理由”をつくってあげていた。
そして春義の高校の卒業式に…

 

 

『英子おばさん3年間本当にありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします』
自分で死んだ兄さんや性悪な後妻や
野次だけ飛ばしていた親戚やいろんなことがもう
昔のはなし

 

 


おばさんの事をえっちゃんと呼び、時々帰省する春義。目頭と胸が熱くなった。

そんな過去を持つ春義がひっかかったのが、『いたぶるの大好き女』=可愛いものや綺麗なものが虐げられるのを見ると以上に興奮する頭おかしい女。そうなんです。春義はいつもなぜか継母に似た女を選んでしまっている。こーゆーのもトラウマに入るのか?本人はもちろん無自覚。
まぁどんどんエスカレートしていくいく。

 

 

 

最後はブチ切れた春義を見て“あの時の目があたしではない誰かを見てるようで急に恐ろしくなったのだ”で、この女から別れます。

 

 

 

 

で、もう別の話かと思って読むのやめよーかと思ったけど読んだらまさかの最後に話をゴッソリ持ってかれたラストの『ナチュラルボーンバカ女』白雪。これね、これ↓

 

 

 

『ここって…死後の世界なの!?』
『そうだけど?』
観光スイッチオン

 

 

 

 

28歳、無職で夜中に友人呼び出すツインテール女ww。猫を追いかけて道端に飛び出し車に撥ねられ生死をさまようww。←そしてそれをめっちゃ楽しんでる。
この女を撥ねたのが実は春義。優待離脱?中、春義の事が見えてた白雪は目覚めた後、面会に来た春義に…

 

 

 

『ねえねえ「あんたに死なれたら」なに?』
『じゃぁあれも覚えてないの?えー?だからあたしが「死ぬ~~ッ」って手ぇ引っぱってくれたじゃん だから死なずに帰って来れたのに!』

 

 

 

頭がおかしくなったと必死で話を止める親、と涙を流す春義。そうなんです。このナチュラルボーンバカ女、が春義のもう一人の救世主なわけで。春義の求愛で結婚しちゃうんですよw。
春義に紹介され、この白雪と会ったミキ。白雪について「大丈夫だって思えたんだよね…」と言う春義。ミキもこれで過去のトラウマから解放されたんじゃないのかなぁ。ミキと白雪の2人の最後の会話がうまーくこのお話の核的な感じなのか?って思いました。白雪がミキに言ったひとこと。

 

 

 

『まぁいっか視点が変われば別の話になるし。』

 

 

ラストこのナチュラルボーンバカ女にいきなり高速170キロ位出されてラストに持ってかれたかんじwwバカは地球を救う、ですねw。いがわ先生もラストは「おばかなハッピーエンド」って決めてたみたい。なんかネタバレ読むと暗ーーーい感じに見えますが、シリアス:ギャグ:距離感:アホキャラが1ずつって感じなので読み手としては胸焼け感はなくむしろ清々しいです!!笑ったり胸が痛くなったり感動したりまた笑ったり安心したり、で自分の感情が忙しいww数回読んで話がつながります♫

好みは別れるかもだけど、私はこの作品よんでいがわ先生って天才だなって思いましたよ〜。本屋に入って吸い寄せられるようにこの本を手に取ってよかった、とホントに思ってます♫
1話から全てがつながります。色んな発見があると思います。ほんとーーーに読んで欲しい一冊です!!

 

《引用元 作品DATA
出版社:幻冬社
著者:いがわうみこ
掲載誌:スピカ

 

 

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